LD 学習障害
LD 配慮と手立て
LD児の特性は人それぞれ違います。まずは知能検査や的確な能力診断を受け、その上で個々の特性に合わせた学習プログラムを組まねばなりません。例えば、書字障害を伴う子どもに「書けば書くほど覚えて上手に書くことが出来る」「やればやるほど出来るようになる」といった旧来のルールは、非常に酷なものにしか過ぎません。少量を毎日コツコツ続ける方が効果的です。また、一般的な教科学習だけでなく、その背景にある能力を底上げすることも必要となるでしょう。
「聞く」力に困難をもつ子どもへの手立て
<話が上手に聞けない子とは…>
- 聞き間違うことが多い。
- 聞きもらしがある
- 聞いたことをすぐに忘れてしまう
- 個別の場での話しは聞き取れるが、集団場面では難しい
- 聞き取りの指示の理解が難しい
- 単語は理解できているが、文章としての意味は理解できない
<背景として考えられること>
○ 耳からの情報の入力に課題がある
- 注意を話し手に向けることが出来ているか
- 文章の聞き取りに間違いはないか
○ 情報の処理に課題がある
<支援へのヒント>
○ 情報の入力に課題のある場合
- 顔を見たり、肩に手をおいたりして、注意を引きつける工夫をする
- 耳からの情報だけでなく、絵、カード、板書など視覚面からの情報をプラスする
○ 情報の処理に課題がある場合
- 聞いた内容を記憶したり理解したりするために、内容を整理する(復唱したりメモを取ったりする、など)
「話す」力に困難をもつ子どもへの手立て
<自分の思いをうまく伝えられない子とは…>
- 思いつくままに話す。筋道を立てて話しにくい。
- 内容や表現に乏しい話しになってしまう。
- 言葉に詰まってしまう。
- 適切な早さで話すことができない。
<背景として考えられること>
- 自分の考えがまとめられない。
- 話しているときに、内容を確認していない。
<支援へのヒント>
○ 「話したい」という意欲をなくさせないようにすること
- 手がかりとなる話題を示したり、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、どうした、そのわけは)を示してみる。
- 子どもの話の内容を考え、不十分な内容を補いながら、話したいことをまとめてあげる。
- 話しやすい話題を取り上げ、話す機会を増やしてみる。
「読む」力に困難をもつ子どもへの手立て
<文章を読むことが苦手な子とは…>
- とばし読みをしてしまう。(文中の語句を抜かしたり、行をとばしたりする)
- 文末などを違う言葉に置き換えて読んでしまう。(「〜でした。」を「〜でしょう。」と読んでしまうなど)
- 文章の内容を正しく読み取ることができない。
<背景として考えられること>
○ 情報の入力に課題がある
- 読んでいるところを目で追えない。
- 句読点を意識して、ことばを把握することに弱さがある。
○ 情報の処理に課題がある
- 視覚でとらえた文字と意味との理解に問題がある。
- 文章の関係がわからない。
- 構造化、概念化に弱さがある。
<支援へのヒント>
○ 情報の入力→目で追いやすくすること
- 指で押さえながら、読んだり、文節ごとにアンダーラインやスラッシュなどの区切りを引いてみる。
- 1行だけ見えるページカバーを利用し、読む部分のみを目立つようにする。
○ 情報の処理
- 教師が分かち書きを意識して範読する。
- フラッシュカードでキーワードを提示する。
- 聞いたことや見たことを使って語句や内容を理解しやすくする。
「書く」力に困難をもつ子どもへの手立て
<文字を書くことが苦手な子とは…>
- 板書などの写し書きができない。
- 読みにくい字を書く。
- マス目からはみ出してしまう。
- 鏡文字を書く。
- 特殊音節(拗音、撥音など)の表記を間違う。
- 独特の筆順で書いてしまう。
- 当て字など、間違えた字を書いてしまう。
<背景として考えられること>
○ 位置関係をつかむことに弱さをもっている
- 文字の形がとらえられない。
- 視写する部分がどこかわからない。
○ 細部への不注意
他に、
- 聞いた言葉を文字に置き換えられない。
- 筆記用具の持ち方が適切でない。
などといった課題が見られることがある。
<支援へのヒント>
- 文章や文字を薄く書いたものをなぞる練習をする。
- マス目を大きくする。
- 写すところを目立つようにする。
- 文字の書き始めや筆順などに番号やマークをつける。
- 漢字をへんやつくりに分けて、漢字のつくりを意識させる。
- ひらがなが書けない場合、漢字から指導を始めることも試してみる。
- 書く文章を声に出しながら書かせる。
「計算する」力に困難をもつ子どもへの手立て
<算数が苦手な子とは…>
- 文章題の意味を理解できない。
- 数量や単位の理解が難しく、数量関係がわからない。
- 簡単な計算や暗算が難しく、時間がかかる。
- 筆算すると、位取りがずれる。
- 図形を描くことが難しい。
- 三角定規などの用具がうまく使えない。
<背景として考えられること>
- 形などの細かい部分の違いがわからない。
- 計算のルールがわからない。
<支援へのヒント>
- 具体物、半具体物を利用して、子どもがイメージしやすいように手助けする。
- 位取りを色別に明示するなど、わかりやすくしたマス目に書かせる。
- 文章題の内容を図示し「ことばの式」で表す。
- 1枚のプリントの問題数を少なくする。
- 用具の使い方や手順を、その子がわかりやすい方法で提示する。
「推論する」力に困難をもつ子どもへの手立て
<自分の考えをまとめることが苦手な子とは…>
- 決まったパターンの文章しか書けない、話せない。
- 目的に沿って計画したり、必要に応じて修正することが難しい。
- はやとちりや飛躍した考えをする。
- 尋ねられた内容に適切な受け答えができない。
- 順序立てて話したり、書いたりすることができない。
<背景として考えられること>
- 何を書いてよいかわからない(何を求められているのかがわからない)。
- 因果関係を理解することが難しい。
- 相手の立場に立って考えることが難しい。
<支援へのヒント>
- ひな形となる項目(初めに、次に、最後に)を提示する。
- 文字や絵で思い出す手かがり(時間、場所、場面、人など)を示す。
- 思い出した項目をカードに作り、並び替える。
- 本人が話し終わるまで待ち、その内容を確かめる。