事例集


ケース1 高機能自閉症

14歳男児。

<主訴>

対人トラブル、パニック、学業不振。

<家族歴>

両親、本人、弟の4人家族。父親はサラリーマン、母親は専業主婦。

<現病歴>

 乳幼児健診通過。幼稚園の頃は、昆虫博士といわれていた。2歳でひらがなが読めた。
 小学校低学年では、授業中、好きなことしかせず、立ち歩きがあり、学習に参加しない。母親の話では、家庭ではまじめに勉強していたとのこと。学校側が、教室での様子を家族に伝えると、保護者は、学校での対応が悪いのではと考えた。学習では、漢字の読み書きは得意だが、文章理解と作文が苦手でほとんど学習せず。
  小学校中学年では、いじめが頻発。保護者は学校の対応に不満が募り、学校や他の保護者との関係が悪化し孤立。
  小学校高学年になると登校をしぶるようになり、保護者も心配になり医療機関を受診。AD/HDの診断のもと、リタリンの内服を開始するも改善なく、服薬中断。
  中学入学後も周囲とのトラブルが続き、学力不振も顕著なため、障害児学級入級をすすめられるも保護者が拒否。2年生になって現状では、高校進学が難しく、通常学級では十分な対応ができない事を再度告げられ、学校より当院紹介され受診となった。

<診察所見>

本を読みながら入室。椅子にすわるや否や「先生の車の色は」と聞いてくる。何年生ですかと聞くと、「○○中学2年3組、担任は××先生」という。診察机の上の耳鏡に手を伸ばし母親に叱られるが、気にせず医師の耳を診ようとする。胸部聴診中もそのまま本を読み続けようとし、母親からたしなめられ、本を母親のほうに投げる。
  通級指導教室でのWISC-V(VIQ=108、PIQ=100、FIQ=106)では正常知能であり、学業不振は学校に責任があると母。小学校入学前の子どもに戻って欲しいと。幼稚園から学校への申し送りでは、マイペースで集団から孤立、視線が合いにくい、声を掛けても振り向かない、会話は一方的で話題が飛ぶ、こだわりもあり、指示には従えない。小学校から現在まで様子は変わっていない。

<身体所見>

@ 視覚:追従性・衝動性眼球運動、両眼視およびピント合わせいずれも不十分。立体視と近方視力は正常、目と手の協応は拙劣。DEMは眼球運動障害パターン。
A 手は右利き、目は左利き、利き足は不定。触覚防衛反応あり。変換運動、微細運動、粗大運動はいずれも拙劣
B 感覚:聴覚および触覚過敏あり
<運動・睡眠・食事・生活など>
@ テレビ・ビデオ:平日はつきっぱなし、休日も電車のビデオを見始めると長時間( 4時間以上)に及ぶ。
A ゲーム:平日1時間くらい 土日2〜3時間
B マンガ・本:1日1〜2時間
C 学習:ほとんどしない
D 睡眠:入眠は23:00(ベッドに21:00に入る。図鑑や本を読んでいる)起床は7:00(寝付き・寝おきともに悪い)
<甲状腺機能検査、脳波検査、CPTなど>
@ 脳波:右側頭部にてんかん性異常波あり
A 甲状腺機能:異常なし。
B CPT検査:異常なし

<治療経過>

 保護者と学校側に診断を告げた。
 小学校入学後に症状が目立つこと。学校と家庭のちぐはぐさ。人見知りのなさ。特定の興味の偏りや機械的記憶力の高さなど自閉症の特長であることを説明。
  社会的ルールの習得のための個別支援が必要であること。そのためには障害児学級入級が適切であることを伝えた。
  保護者には自閉症についての本を薦めた。

<治療経過その後>

保護者は、熱心に勉強し、今まで子どもに抱いていた疑問が障害であることがわかり、むしろほっとした。その後、配慮の得られそうな高校に進学し、高校2年のときに本人への障害の告知を行った。
生活習慣の確立、社会的ルールの習得、本人へのトラブルの原因の対処を指導。
  現在、適性にあった職場での勤務をしている。



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