人間をはじめとする多くの生物は、基本的なリズム(活動する・休む・眠る)および体内の働き(自律神経機能・内分泌機能・代謝機能などのさまざまな生体機能)が1日に約25時間を周期とするリズムで変動しています。そして、この変動のリズムをもたらしているものを生体時計(体内時計)と呼びます。ヒトの生体時計は実際の1日24時間より約1時間長いので、社会生活を維持していくためには、1日24時間を周期とする生活リズムに調整していかなければなりません。この生活リズムが狂ってしまうと、不眠症、うつ、不登校、全身倦怠感、注意集中困難、イライラ、学習困難、自閉傾向などのさまざまな症状が出現します。不眠症は入眠困難という形で現れ、遅寝遅起きになります。近年、発達障害や夜型生活との関連で増加している睡眠相後退症候群は、子どもの身体・知能の発達、さらには不登校、神経症、自閉傾向を強めるとして注目されています。では、どのようにして生活リズムを24時間にリセットして規則正しい生活にすればよいのでしょうか?
生活リズムをリセットする因子として以下のものがあります。
この中で、朝の光を浴びること、朝食、日中の運動がもっとも強い同調因子です。朝のジョギングや歩いて登校するなどの活動はこれらをすべて満たしてくれるといってもいいでしょう。特に、生活リズムによって自閉症児の症状が助長されることが知られています。
生活リズムと大いに関連のある睡眠について、考えてみましょう。睡眠を阻害する因子の中で、ストレスが占める割合は一番大きいのかもしれません。一般によく聞かれる不眠症とは、心身の健康を維持するために必要な夜間の睡眠が量的または質的に不足し、昼間の日常生活に支障をきたしたりストレスを抱え込んでいる状態のことをいいます。逆に、睡眠に問題がないということは、日中眠気がなく、心身共に健康に生活できる睡眠がとれるということです。
ここで、睡眠障害の4つのタイプを見てみましょう。
布団に入ってもなかなか寝つけないタイプ。不眠の中ではもっとも訴えの多い症状。
夜中に何度も目が覚めてしまい、再び寝つくのが難しいタイプ。
睡眠時間のわりには、朝起きた時にぐっすり眠った感じがしないタイプ。
朝早く目覚めてしまい、まだ眠りたいのに眠れなくなるタイプ。高齢者に多いのが特徴。
夜なかなか寝つけず、朝はなかなか起きることができない状態が極端に悪いもので、最も多いのが、通常夜中の2時から朝の6時頃まで眠れず、そのため朝はまったく起きられなくなるというパターンです。一旦眠ると普通に眠れますが、その眠る時間帯が社会のリズムとずれているため社会適応が困難になります。遅刻や欠席が多く、また日中に強い眠気に襲われたり、授業に集中できないといった障害がおこります。このように学校に適応できない状態が続くと二次的に抑うつ状態、不登校、ひきこもりになることも稀ではありません。
中高校生の不眠患者の約半数がDSPSといわれており、思春期での発病率がもっとも高く、典型的なDSPS患者は発病前から夜型人間の傾向が強く、感覚過敏のある広汎性発達障害や、ゲーム・携帯電話などにはまっている場合に多く見られます。
また、DSPSが不登校の原因かもしくは結果かについての判断は難しいですが、両者は深く関係しており、DSPSの治療をすることで不登校から立ち直ることができたケースも多く見られます。DSPSの病態生理は、睡眠相だけでなく、深部体温のリズムや脳のメラトニン(睡眠を制御するホルモン)の分泌リズムが遅れており、このため生体リズムが後退したまま固定され、外部環境に同調できない状態となることがわかっています。
では、DSPSを改善するための早寝早起きの工夫をみてみましょう。
朝食は一日の活動の源ともなります。国立健康・栄養研究所食品科学部の平原文子氏は、医学部の学生を対象とした朝食と学業に関する調査を行い、その結果によると、朝食をきちんと食べている学生は学業成績や成績順位がよく、また年間の講義欠席時限数も少ないことがわかったそうです。
早寝早起きには、「早起きをつづけること」からはじめることが大切です。
心身に刺激を与えるようなものはできるだけ避けた方がよいでしょう。
寝る1〜2時間前から脳をリラックスさせることが大切です。一旦布団に入った後でも、眠れない時は無理に眠ろうとせず、布団を出て気分を変えるのも一つの方法です。できれば眠くなるまで布団には入らないようにしましょう。また、布団の中で、好きな本を読む、携帯電話、ゲームなどをしないようにしましょう。他には
が挙げられます。
テレビ、ビデオ、ゲームなどさまざまなメディアに溢れる現代、子どもに対する影響・問題が大きく取り上げられています。日本小児科医会では、『「子どもとメディア」の問題に対する提言』の中で具体的提言として、次の5つを取り上げています。
*ここで述べるメディアとは、テレビ、ビデオ、テレビゲーム、インターネット、携帯電話などを意味します。乳児・幼児期ではテレビとビデオ、学童期ではそれに加えてテレビゲームや携帯型ゲーム、思春期以降ではインターネットや携帯電話が問題となります。
物音や照明などの刺激を避け、落ち着いた寝室環境をつくることが大切です。
障害の種類に関わらず、また、テレビやゲームのしすぎなどにより、生活リズムの乱れている子どもも多く見られます。子どもが衣食住に関わる基本的な行 動・習慣を身に付けるためにも、約束を決めて子どもがしたいことをする「時間」を保障しながら、まずは親が子どもの生活リズムをコントロールすることが重要です。さらに、タイムスケジュールのような簡単な表などを使い、目に見える形で評価することでより意識しやすくなるでしょう。
生活リズム日誌をつけてみよう!
睡眠・学習・テレビゲームの時間ごとに色分けしてみましょう。
また、その日の気分を4段階で評価しておきましょう。
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